GEAR LEATHER COLUMN

最近の革製品の高騰の原因

  • 2019年12月22日
  • 2020年2月21日
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革靴に限らず、革製品をよく目にする方はご存知だと思いますが、ここ10年間の革の値上がりは相当なものです。今回は、「革製品の高騰の理由」について書かせていただきたいと思います。

革靴の値段高騰に関して


まず革靴に関してのお話になります。革靴に使われている材料は、その名の通りその大部分が革を使って作られています。まずアッパーと呼ばれる甲革(靴の足を覆う部分)、中底、本底、ヒール、シャンクまで全て革で作られている靴もあります。そのため、革そのものの値段が高騰すると、必然的に革靴の値段も上がってしまうのです。

しかし、いくら革の値段が上がったといっても1デシ(10㎝×10㎝角)あたりせいぜい数十円です。例えば短靴のケースでは、もっとも革の面積の大きいアッパーでも、革の使用量はおよそ30デシ程度ですので、「靴の値段がそんなに上がるのはおかしい」と考える方もいるかと思います。

ただ近頃の革は、革の値段が上がっているだけではなく、革の質も落ちてしまっているのです。この革の質の低下が革製品の値段の高騰へつながっているのです。

革の品質低下の原因とは

ではなぜ革の質が下がり、革製品の値段が高騰しているのかというと、そこには中国が関係しています。

私が革のタンナーや卸の方に聞いた話では、中国の牛肉輸入量が急増しており、2016年には日本を抜いて、アメリカに次ぐ世界第2位の牛肉輸入国となりました。中国では伝統的に豚肉を好む文化なのですが、これまではあまり食べられなかった牛肉の消費量が都市部を中心に急拡大し、中国国内での生産が追い付いていない状況なのです。

中国での需要急拡大に対し世界的に牛肉の生産・供給がまったく追いつかなくなり、牛に成長剤等を投与することが余儀なくされました。
人工的な牛の成長促進によって、牛の革は急激に伸ばされ、シワや血管が浮き上がり、結果として革の品質の低下に繋がったのです。
所詮、革は食肉の副産物なので食肉優先で育てられ方が変わってしまうのです。

中国での革製品の需要も拡大

さらに中国でも革製品の需要が増えています。日本に原革(鞣す前の革)が届く前に、一旦中国を経由し、中国で質の良い原革を抜いた後で日本に到着するため、日本国産の革の質の低下に繋がります。
革質が低下すると質の良い部分だけを選りすぐって裁断しなければならなくなってしまいます。これまでは1枚の革で5足分のアッパーが裁断出来ていたにも関わらず、今では3足や最悪1足しか出来ない場合もあるので、より急激な値段の高騰に繋がっているのです。

残念ながら今後も革の値段が下がる気配がないのが現状です。